玉川 実際、ソラコムは既存の通信キャリアのビジネスを破壊したいとはまったく考えておらず、多くの企業のイノベーションを支える“ゆりかご”を作りたいと思っただけなのです。IoTの世界にはまだスモールスタートを可能にするプラットフォームが存在せず、ならば私たちが最初につくって提供しようとソラコムを立ち上げました。

藤井 その理念はKDDIもまったく同じです。そういう意味でも、一緒に組めることになったのは本当によかったと思います。

玉川 我々もそう感じています。ソラコムはソフトウエア開発こそ得意ですが、基地局などのインフラはありません。したがって、今後より革新的なことにチャレンジしていくためには必ずどこかの通信キャリアと協業する必要がありました。その中でもKDDIは、モバイルとネットワークの両方をカバーしていることに加えて、何よりIoTの世界で企業のイノベーションを支えたいという価値観が一致しました。まさにタッグを組む相手として最もシナジーを発揮できると確信したのです。

自ら“コンパス”を持ち、お客さまとともにイノベーションに立ち向かう

藤井 どうすればイノベーションを起こすことができるか。手前味噌ながら、多くの企業のビジネスモデルがネットワークサービス型に変わっていく中で、通信キャリアが果たすべき役割は非常に大きいと自負しています。実際、現在のイノベーションのほとんどはバーチャルな世界から発信されています。先ほど玉川さんから「イノベーションを支える“ゆりかご”でありたい」というお話がありましたが、そうした生まれたばかりのイノベーションを集めて、単独よりも格段に高い効果が生まれるような協力関係を築きたいというのがKDDIの思いです。

玉川 世の中に“地図”を示して「こちらに歩いてください」というのではなく、自ら“コンパス”を持って、お客さまとともにイノベーションに向かっていきたいですね。

藤井 そうありたいと思います。KDDIも単に拠点と拠点をつなぐだけのネットワークから、ビジネスとビジネスをつなぐネットワークをご提供できるよう進化を促進しています。そのひとつの起爆剤としてIoTに対する敷居を下げる、つまりスモールスタートを容易にするという意味で、ソラコムが提供を開始した「スターターキット」も非常におもしろいですね。私も実際に触りましたが、IoTデバイスが簡単にクラウドへとつながり驚きました。

玉川 ありがとうございます。藤井さんのようなマネジメント層の皆さまにも、ぜひ試していただきたいというのがソラコムの狙いです。これからは日本企業もハードウエアだけでなく、ソフトウエアやサービスを軸としたビジネスをグローバル展開していくことが、国際競争力の維持という点からも非常に重要です。

藤井 ソラコムとKDDIで、さらに多くのお客さまのデジタルトランスフォーメーションを一緒に支援していきましょう。