消費電力が低く、遠距離通信も可能なLPWA(Low Power Wide Area)の登場によって、技術的に新たなフェーズへと入ったIoT。今後はこれまで以上に幅広い領域への適用が進んでいくと予想されている。ここで大きな課題となるのが、いかにしてビジネスへとつなげていくかという点だ。日本ではIoTの実証実験は数多く行われているが、新たなビジネスモデルへとつなげているケースは、まだ決して多くはない。ここではIoTビジネス成功の勘所について探るため、数多くのIoTビジネスを手掛けるKDDI株式会社 ビジネスIoT企画部長の原田 圭悟氏に話を伺った。

IoTの適用領域を一気に拡大していく新技術とは

―― 最近ではIoTに着目する企業が増えており、実際に導入して効果を上げているケースも出てきていると聞いています。具体的にどのような成功例があるのでしょうか。

原田 最近多くなっているのは、製造業での成功事例です。工場にIoTを導入して製造設備の異常を検知し、故障する前に対応することで製造ラインの停止を防止するという取組みです。工場ではいったん設備が故障してしまえば、その修理や置き換えが完了するまでラインが停止してしまいます。しかし、仮に2週間前にその予兆をとらえることができれば、計画停止の時間内に部品を交換し、故障を回避することが可能になります。

KDDI株式会社 ビジネスIoT企画部長 原田 圭悟氏

―― 工場はIoTの効果が見えやすい領域だといえそうですね。

原田 IoTを活用した予兆検出は、稼働率の改善といった数値で計測しやすい効果が出るため、投資も比較的行いやすいと思います。しかし、今後はIoTによってもっと大きな変化が生まれると考えています。

 その重要なキーワードが、消費電力を抑えながら遠距離通信を実現するLPWA(Low Power Wide Area)です。KDDIも2018年1月から、携帯電話網を活用したIoT向け通信技術として、セルラーLPWA通信サービス「KDDI IoT 通信サービス LPWA(LTE-M)」の提供を開始しました。これによって、IoTの適用範囲が一気に拡大していくはずです。

―― 実際にどのような領域に広がっていくのでしょうか。

原田 LPWAは消費電力が極めて小さいため、電源確保が難しい場所での利用が可能です。例えばガスメーターや水道メーターにセンサーを取り付け、一定時間ごとに利用量をLPWAで伝送するようにすれば、電池駆動でも長期間動き続けます。また、LPWAは一般的な携帯電話通信に比べ、電波が届きにくい場所でも通信が可能です。そのため、土の中に埋め込まれたセンサーや山林地帯に設置されたセンサーからもデータを収集できる可能性があります。つまり、農業や林業でも活用しやすくなるわけです。