長年の経験を基にIoTのビジネス化を支援

―― IoTの適用範囲が広がっていく中、課題となっているのはどのような点なのでしょうか。

原田 IoTの課題は、大きく分けて技術面とビジネス面に分けることができますが、技術面の課題は既にかなりクリアできています。それに対し、ビジネス面の課題はまだ山積されたままだと思います。IoTへの取り組みの多くは実証実験まではスムーズに進むのですが、その後の事業化がなかなか進まない、という傾向が強いのです。実証実験だけを行っても、それをビジネス化できなければ意味がありません。そこでKDDIでは、IoTに関する専門の提案部隊を設置し、ビジネスモデル策定のお手伝いをしています。

―― 具体的にどのような事例がありますか。

原田 先ほど申し上げたように、工場におけるIoT活用でラインの不具合の予兆を検知する事例が数多く生まれています。また最近では、IoTを活用した新たなビジネスモデルも生まれています。例えば空調機メーカーさまのある事例では、自社製品にIoTを組み込むことで、運転状況の遠隔監視を行っています。これによって異常を検知したときの迅速な修理対応を実現した他、老朽化を見越した新モデル提案にもつなげているといいます。

―― KDDIといえば通信会社としてのイメージが強いですが、なぜIoTのビジネス化を支援できるのでしょうか。

原田 KDDIには、既にIoTに関して長年にわたる実績があるからです。2001年には法人向けM2M/IoT事業を開始しており、2002年には乗用車のテレマティクス、2004年には商用車のテレマティクス、2005年にはホームセキュリティ向けの通信モジュールの提供や、一部のお客さまについてはシステム提供もしております。また、2015年にはスマートメーターにも取り組み始めており、このあたりから急速に契約回線が増大しています。さらに、このような社内経験を横展開し、ビジネスにつなげる提案を行える人材も積極的に育成しています。

KDDIの法人向けIoT契約回線の推移
2001年からこの事業に取り組んでおり、既に豊富な経験を持っている。また、2015年から2016年にかけて契約数が急増している点も注目すべきポイントだ

―― これまでの経験から、お客さまがどこで壁にぶつかりやすいのかを把握しているため、それを回避できるということですね。

原田 そうです。お客さまが困ることに対して、お客さまに言われる前に先手を打っています。また、現在、センサーから通信、その上のデータ分析までワンストップで提供できることも、当社の大きな強みと考えています。IoTのうちの一部を提供する会社としては既に数多くのプレイヤーが登場していますが、すべてをワンストップで提供できるところはなかなかありません。

KDDIが提供するIoTソリューションの全体像
センサーデバイスから通信ネットワーク、データ活用クラウドまでワンストップで提供している。また、顧客同士でデータを流通できる「KDDI IoTクラウド Data Market」が用意されていることも注目すべき特長だといえる