※この記事は、KDDI定期刊行誌 be CONNECTED. Vol.2(2018年3月発刊)を一部改編したものです。

 JR西日本は、同社が運営するコールセンターにKDDIが開発した「チャットボット」を導入、2018年5月24日に正式にサービスとしてリリースした。

 このサービスは、問い合わせの約4割を占める忘れ物への対応の一部を、オペレーターに代わってチャットボットが受け付けるというものだ。WEBからリアルタイムにコミュニケーションできる新しいチャネルを開設するとともに、忘れ物対応業務を効率化できたという。このソリューション導入にはどのような経緯があったのか。その全貌に迫る。

問い合わせの約4割を占める忘れ物対応に課題

 鉄道事業において、列車内や駅構内の忘れ物の問い合わせ対応はお客さま満足度向上のために必要不可欠な業務のひとつ。西日本旅客鉄道株式会社 (以下、JR西日本) の場合、年間100万件以上の拾得物 (忘れ物、落とし物) があり、当然のことながら、忘れ物についての問い合わせは非常に多く、同社の電話窓口「JR西日本お客様センター」 (以下、コールセンター) には受電数全体の約4割に相当する1日当たり1,200~1,500件もの問い合わせが寄せられ、その対応に苦慮していたという。

 「コールセンターでは従来、ひとりのオペレーターが運行状況や運賃のお問い合わせと兼任で忘れ物のお問い合わせにも対応していたため、お客さまから『電話がつながりにくい』といった苦情が寄せられていました。そこで当社は2016年7月、コールセンター内に忘れ物対応専門チームを創設するとともに、忘れ物捜索の業務フローを再整理し、お客さまとの電話中にリアルタイムに検索して拾得の有無を回答できるように改善しました。同時にオペレーターを増員して電話のつながりやすさも向上させましたが、応答率の向上は同時に着信件数の増加を招き、今まで電話がつながらないことにより諦められていた潜在的な需要を掘り起こし、想定以上の着信件数に対応しなければならないという課題を抱えていました」

 こう話すのは、コールセンターの品質向上に取り組む同社鉄道本部 CS推進部 お客様センター高機能化PT (プロジェクトチーム) の渡辺彰彦氏。こうした課題を解決するために、お客様センター高機能化PTでは次なる手立てを模索することにした。

西日本旅客鉄道株式会社 鉄道本部 CS推進部
お客様センター高機能化PT 担当課長 渡辺 彰彦 氏

 「電話をつながりやすくするために、さらにオペレーターを増員する方法もありますが、増員に頼らずお客さま満足度を高める方法はないだろうかと検討を重ねた結果、忘れ物対応業務の一部を半自動化したらどうだろうかという意見が上がりました」 (渡辺氏)

忘れ物問い合わせ対応に“これまでの運用を適用できる”
チャットボットに着目

 忘れ物対応業務を半自動化する手段として、JR西日本が着目したのは「チャットボット」だった。忘れ物の問い合わせをウェブサイトに用意したチャットボットで受け付けることにより、オペレーターの電話受付業務の負荷を分散して「つながりやすさ」を向上しようという狙いだ。実際の捜索や発見した忘れ物の引き渡し場所などの案内は人が介在しなければならないが、受付業務だけでもチャットボットで自動化すれば、電話業務と比べてさらなる業務効率化が見込める。