チャットボットを選んだ理由について、お客様センター高機能化PTの山口毅氏は次のように説明する。

西日本旅客鉄道株式会社 鉄道本部 CS推進部
お客様センター高機能化PT 主査 山口 毅 氏

 「忘れ物のお問い合わせはそのほとんどが“忘れ物を捜してほしい”というように、目的がはっきりしていますので、お問い合わせの流れをテンプレート化しやすいという特徴があります。コールセンターではこれまでも忘れ物対応をマニュアル化したトーク・スクリプトに沿って運用していましたので、このトーク・スクリプトをベースにシナリオを作成することにより、これまでオペレーターが行っていた定例的な会話を代替してくれるチャットボットを導入できると考えました」

忘れ物の問い合わせ対応にチャットボットを導入した「JR西日本お客様センター」。業務効率化と現場の声をもとにした定型文機能の実装により、オペレーターの評判も上々だ

 こうしてチャットボットの試験導入を決めたJR西日本では、2017年1月頃からチャットボットの仕様要件をまとめ、SIベンダー数社に提案を依頼。比較検討の結果、同社が採用したのがKDDIの提案だった。

 「KDDIを選定したのは、当社の要件を的確に汲み取り、実際の運用までを想定した具体的かつクオリティの高い提案だったからです。その結果、すぐにPoC (Proof of Concept=概念実証) を実施できました。KDDIはPoCの間も常に現場の声を聞き、意見・要望を迅速に反映してくれました」(山口氏)

システム導入により想定以上の業務効率化を実感

 JR西日本から提案を依頼されたKDDIでは、これまで培ったチャットボット技術の経験を踏まえながらも、チャットボットのシステム自体はまったく新規に開発した。

KDDI株式会社 ソリューション営業本部 ソリューション
関西支社 法人営業2部 営業2グループ 主任 海野 遼哉 氏

 「今回のシステムはJR西日本様から詳細な要件が提示されており、チャットボットとオペレーターとのシームレスな業務連携が求められていたことから、既存のソリューションではなく新たにスクラッチでシステム開発を行うことにしました。非常に短い開発期間でしたが、毎日のようにJR西日本様を訪問しながら詳細を詰めていきました。JR西日本様の協力もあり、コールセンター現場の生の意見を聞きながら開発を進めることもできました」 (KDDI ソリューション関西支社 法人営業2部 営業2グループ 主任 海野遼哉)

 JR西日本がこだわったのは、フレンドリーな使い勝手だ。ロボットの姿をしたキャラクターをコンシェルジュとして用意するなど、親しみやすさに加え、パソコン用のウェブサイトだけでなく、スマートフォンでも専用アプリをインストールすることなく利用できるようにした。

 2017年3月のPoCを経て、翌4月には実運用に向けて機能をブラッシュアップ。安定稼働を確認したのち、8月から営業時間と曜日を限定して一般向けに公開した。一般向けの運用を開始すると、チャットボットの導入効果はすぐに表れたという。