KDDIがSD-WANサービス『KDDI SD-Network Platform』の提供を開始した。さまざまなタイプのネットワークを仮想化でき、常に最適なネットワークを活用できる次世代の企業向けネットワークインフラである。その背景には、本格的にデジタルトランスフォーメーションに臨む企業に向けたサービス戦略がある。今の日本企業の抱える課題をKDDIはどう支えていくのか。同社のソリューション事業企画本部副本部長の藤井彰人氏に話を聞いた。

まず小さく素早く最初の一歩を踏み出す

 ICTの浸透・普及により、生活やビジネスはより良いものへと変化していく。これが「デジタルトランスフォーメーション」という概念だ。一方で、その変化のスピードに対応していこうとする企業にとって悩みは尽きない。藤井氏は、「デジタルトランスフォーメーションという言葉自体は、そう特別なものではありません。IT、コミュニケーション、ネットワークといった新たな力が登場すれば、新たなビジネスが立ち上がっていくのは当たり前の流れなのです」と語る。

KDDI株式会社 ソリューション事業本部副本部長の藤井彰人氏

 問題になるのは、既存のビジネスを展開している企業が、どうやってこれらの新しい力を活用するのかという点だ。新規に立ち上げる企業と違って、まったく別の視点からビジネスを立ち上げるというのは容易ではない。経営者がデジタルトランスフォーメーションを「当たり前」と捉えて実現していくために、どんな考え方が必要になるのだろうか。

 藤井氏は「ポイントは、正解のないものにトライするということです。これまでITと言えば、サービスや業務の効率化に利用するものでした。その考え方から抜け出す必要があります」と指摘する。

 効率化するだけなら“何をするべきか”という明確な正解があり、その正解に向けて時間をかけてシステムやサービスを作りこんでいくことができた。しかし、ICTが新しいビジネスを生み出す今はまったく状況が異なる。

 「今、ICTの活用を成功させるために重要なのは、素早くトライ&エラーを繰り返せることです。その傾向は、業界の枠をこえた新しいアイデアや競争が生まれている現場で特に顕著に見られます。クラウドが注目されている理由も同じです。以前は、ITを導入しようとすれば大きなコストがかかり、その償却のために使い続ける必要がありました。しかし、クラウドなら小さく、素早く始められます」(藤井氏)。

 小さな規模でビジネスをスタートさせ、うまく立ち上がれば全社に展開し、逆にうまくいかない時には縮小したり撤退することもクラウドなら容易にできる。「それがデジタルトランスフォーメーションのためのプラットフォームです。これから導入するITは、小さく始められる仕組みがあるかどうかがポイントになります」と藤井氏はICT基盤を選択する際のポイントを指摘する。

重要なのは常に進化を続けられる仕組み

 こうした変化の中で、同社は新たにSD-WANサービス『KDDI SD-Network Platform』の提供を開始した。『KDDI SD-Network Platform』では、さまざまなネットワークを組み合わせて柔軟で迅速なネットワークインフラを構築することができる。この『KDDI SD-Network Platform』とクラウドとの組み合わせで事業環境の変化を継続的にサポートすることができ、ビジネスの可能性を広げることができる。

 「市場やサービスが急速に変化し続けている中で、3年後も、今と同じインフラのままではいられません。それを支えるために常に進化を続けられる仕組みが必要です。」と藤井氏は『KDDI SD-Network Platform』が登場してきた背景を語る。

 今までのネットワークサービスは、イントラネットをはじめ、アクセスやセキュリティまでサイロ化したインフラ環境が中心だった。しかし今は、モバイルを含むさまざまなアクセス、多彩なコネクティビティのニーズに対応する、オープンでハイブリッドな環境が求められているという。IoTの普及でこうした変化にさらに拍車がかかるのは明らかだ。

 「クラウドはデジタルトランスフォーメーションの取り組みを推進する武器であり、ネットワークはそれを次のステージへと押し上げる基盤です。この2つの組み合わせで、デジタルトランスフォーメーションを実現するための選択肢が広がりました」と藤井氏は語る。

 注目したいのが、新しいタイプのサービスを作り出すために、同社自身が3年ほど前から変革に取り組んできていることだ。「デジタルトランスフォーメーションに対応していくために、開発体制も、組織の役割も、企画プロセスも、社内の意識までも変化させてきました」と藤井氏は振り返る。